HAL便り

【外国人雇用の概要】(1)基本的な流れ

2024.12.12

初めて外国人を雇用するとなると「何から手をつけて良いか分からない」という方も多いでしょう。
でもご安心ください。基本の流れを理解すれば難しくありません。
以下が「ビザ取得から就労開始までの一般的なステップ」です。

1
求人と採用

2
在留資格確認

3
雇用契約書作成

4
COE申請

5
ビザ申請

6
入国・在留カード取得

7
労務手続き

8
就労開始

※4〜6の工程は、採用する外国人の現在の在留状況によって多少異なります。
以下では各ステップを簡単に説明します。

1. 求人募集と採用決定

最初に、なぜ外国人を採るのかをはっきりさせます。たとえば「海外取引の拡大」「日本人だけでは人手が足りない」などです。次に、仕事の中身を具体的に書き出します。毎日の仕事内容、必要な技術や経験、日本語の目安(例:お客様対応があるならN2相当)まで明記します。面接では、口頭だけでなく簡単な実技や課題で確認するとミスマッチが減ります。採用の判断理由はメモで残しておきましょう。後の在留手続で説明しやすくなります。よくある失敗は「とりあえず英語ができれば可」として仕事内容がぼんやりすることです。配属先の教育担当、初月のOJT計画、困った時の相談窓口をあらかじめ決め、入社前に本人にも共有しておくと立ち上がりが早くなります。

2. 必要な在留資格の確認

採用したい仕事と、該当する在留資格が合っているかを最初にチェックします。「技術・人文知識・国際業務」は専門職向けで、学歴や実務経験の要件があります。「特定技能」は対象分野の試験や日本語能力試験の合格が必要です。求人票や雇用契約書に書いた仕事の内容が、その在留資格のルールに合っているかを確認しましょう。入社後に仕事内容を広げる場合は、職務記述書を更新し、指示系統や評価方法も書面で整えます。更新審査に備え、業務の実績を写真・成果物・日報で残すと安心です。

3. 雇用契約書の作成

契約書には、給与の総額と内訳、昇給規程や退職金の有無、所定労働時間、残業の扱い、固定残業代の有無と時間数、有給、社会保険、試用期間、更新の条件、退職手続きなどを具体的に書きます。誤解を避けるため、可能ならやさしい日本語版や母国語版も用意します。住宅補助や通訳費など立替のルールも入れておきましょう。ありがちな抜けは「日本語だけで説明して署名だけもらう」「労働条件通知の不備」「社会保険の誤認」です。内定→条件説明→二言語契約→控え交付→スキャン保管、の順に整理し、更新時は変更理由を一枚にまとめると在留期間の更新での説明がスムーズです。

4. 在留資格認定証明書(COE)の申請

入国前の要となる手続です。会社の概要、直近の決算、雇用理由、具体的な仕事内容、教育・管理体制、雇用契約、本人の学歴・職歴などをそろえます。審査の見られ方は「仕事は専門的か」「会社に受入体制があるか」「雇用が続きそうか」です。抽象的な表現は避け、業務の流れ図、担当者、使用ツール、成果物の例まで示すと伝わります。想定質問への答えを事前に用意し、申請から交付まで2〜3か月を見込み、入社日を逆算します。配属や勤務場所の変更が出たら、説明文を追加できるよう管理台帳を作っておくと対応が早くなります。

5. 日本大使館・領事館でのビザ申請

COEが出たら、本人が母国の在外公館でビザ申請をします。国により必要書類や面接が変わるため、最新情報を必ず確認します。航空券や住居はビザが出てから確定するとリスクが低いです。家族帯同がある場合は、帯同者の書類や子どもの学校手続、保険加入の段取りまで同時に組み立てます。もし不許可が出たら、理由を整理し、仕事内容の明確化や体制の補強など、再申請の改善点を具体化します。

6. 入国手続きと在留カードの取得

入国後にやることは、①空港からの案内と移動、②住居の手配・契約・電気ガス水道と通信の開通、③市区町村での住民登録とマイナンバー受取、④銀行口座の開設補助、⑤生活オリエン(病院の受診方法・緊急連絡・災害時対応を日本語と母国語で説明)、⑥在留カードとパスポートのコピー回収、⑦実施記録(チェックリスト・受領書・写真)の保存、の7点です。
【登録支援機関に任せる場合】上記①〜⑦を一括で委託します。契約書には期限(例:住民登録は入国後7日以内、ライフライン開通は14日以内)と証跡提出方法(チェックリスト+控え資料)を明記します。費用の負担区分(敷金・保証料・通訳交通費など)もあらかじめ定め、本人にも日本語と母国語で通知します。会社は入社日と初回オリエン日程の確定、社会保険の会社手続、PC・アカウント・備品の準備、メンター指名、在留期限アラート登録に集中します。特定技能の場合は、法定の支援計画に沿った月次報告を受領し、不足があれば差し戻します。
【自社で行う場合】各工程の担当者と締切を先に決めます。案内資料は必ず日本語と母国語で作成・配布します。完了後はチェックリストに記録し、受領書・写真をPDFで保存します。在留期限は30・60・90日前の自動通知を設定し、更新準備を前倒しで開始します。これらを徹底するだけで、抜け・遅れ・説明不足を大きく減らせます。。

7. 社会保険・労務手続き

入社日に合わせて、健康保険・厚生年金・雇用保険の加入を進めます。手続きの遅れは、給付や将来の脱退一時金、在留更新に影響することがあります。銀行口座、通勤経路、扶養の確認、源泉徴収や住民税の設定も初期にまとめて行います。勤怠システムは外国人にも使いやすい表示にし、36協定や固定残業代の運用は書面と実態を一致させます。労災や病気の連絡フローは図にして周知すると混乱が避けられます。人事関係の案内文は日本語と母国語の定型テンプレートを用意し、毎回同じ説明ができる状態を作ります。

8. 就労開始

最初の1か月は「いつ、誰が、何を教えるか」を日程に落とし込みます。1日目は会社説明と必要ツールの設定、1週目で基本業務の練習、月末に成果物レビュー、という形がシンプルで効果的です。用語集や業務手順書、連絡の決まり(報連相のタイミング、チャットの使い方)を渡し、迷った時の相談先を一つに決めます。評価は週次のミニ面談と月次のKPI確認で進めます。文化の違いでつまずきやすいのは、遠慮して質問しない、残業の考え方、暗黙のルールです。ロールプレイとメンター制度を入れると、早く馴染みます。実績はスクリーンショットや簡単な記録で残し、更新時の証拠にします。

※手続き内容は在留資格や業種により異なります。余裕を持ったスケジュールを立てましょう。