HAL便り

「外国人はすぐ辞める」の前に——在留期間更新の”見通し”を共有しているか?

2026.04.18

 

 

外国人雇用のミカタ

「外国人はすぐ辞める」の前に

「また辞めた」「外国人はすぐいなくなる」——そう口にする前に、ひとつだけ確認してほしいことがある。

あなたの会社は、そのスタッフの在留期間がいつ満了するか、把握しているだろうか。更新に何が必要で、いつまでに動けばいいのか、本人と共有できているだろうか。

離職の原因として語られがちな「給与」「日本語力」「文化の違い」。しかし私が17年の実務を通じて繰り返し目にしてきたのは、もっと根深く、もっとシンプルな問題だ。「この会社にいて、自分のビザは大丈夫なのか」——この不安に、誰も答えてくれない。それが、静かな離職の引き金になっている。

在留資格に関する不安が離職に繋がる理由

外国人スタッフにとって、在留資格は日本で生きていくための土台そのものだ。在留期間が更新できなければ、働くことも、住むことも、この国にいることすらできなくなる。

にもかかわらず、多くの現場では更新手続きの話が共有されていない。「更新はいつですか」「何を準備すればいいですか」と聞きたくても、誰に聞けばいいかわからない。聞いても「行政書士に任せてあるから」と流される。

この状態は、日本人に置き換えてみればわかりやすい。「あなたの雇用契約は更新されるかどうか、上は何も言ってくれない。聞いても曖昧にしか返ってこない」——そんな職場で安心して働けるだろうか。

安心の土台がないまま定着を求めるのは、そもそも無理がある。ここでひとつ、実務上の重要なツールに触れておきたい。就労資格証明書だ。これは入管法第19条の2に基づき、その外国人が現在の就労活動を適法に行えることを出入国在留管理局が証明する文書である。

「共有できているか」のチェックポイント

就労資格証明書について:
本人に就労資格証明書の意味と役割を説明したことがあるか。転職者や業務変更があったスタッフについて、証明書の取得を検討したか。取得済みの場合、その内容を本人と一緒に確認したか。

在留期間更新の見通しについて:
本人の在留期間の満了日を、担当者が正確に把握しているか。更新申請に必要な書類と準備の段取りを、本人に説明しているか。「いつまでに何をすれば更新できるか」を、本人が理解しているか。

ひとつでも「いいえ」があるなら、そこに改善の余地がある。そしてその改善は、大掛かりなシステム導入ではなく、明日からできる小さな手順で始められる。

更新スケジュールの「見える化」

在留期間の更新は、期限の3ヶ月前から申請できる。この事実を、担当者と本人の両方が「見える」状態にしておくことが重要だ。

方法は簡易でいい。事務所やスタッフルームの壁に、A4一枚のシートを貼るだけで十分だ。スタッフの名前(またはイニシャル)、在留期限、更新準備の開始予定日を一覧にして貼り出す。

本人が「自分の期限がいつで、いつから動くのか」を目で確認できること。それだけで、不安の質が変わる。

対話の始め方——面談で何を話すか

スケジュールを共有したら、次はそれを「対話のきっかけ」にする。更新の3ヶ月前に1回、申請準備の段階で1回、更新完了後に1回——最低でもこの3回は、本人と話す機会をつくってほしい。

面談では手続きの確認だけに留めない。「更新の準備、何か心配なことはありますか」「この先、どんな仕事をやってみたいですか」「今の仕事で困っていることはありますか」——こんな話題が入口になる。

大事なのは、面談の目的を「管理」ではなく「支援」として位置づけることだ。「更新手続きちゃんとやってますか」ではなく、「一緒に準備していきましょう」。この姿勢の違いが、本人の信頼感を左右する。

まとめ——安心感を補うことが、定着につながる

「外国人はすぐ辞める」と嘆く前に、確認すべきことがある。彼らの在留資格の状態を把握しているか。更新の見通しを共有しているか。不安に応える対話の場をつくっているか。

離職の本質は、待遇への不満だけではない。「この会社にいて大丈夫なのか」という不安に、誰も答えてくれないことへの絶望だ。逆に言えば、安心感を補うだけで定着率は変わる。

就労資格証明書を見せて説明する。更新スケジュールを壁に貼る。3ヶ月に一度、面談の場をつくる。どれも明日から始められることばかりだ。「あなたのことを会社はちゃんと見ていますよ」というメッセージを、形にして届けること——それが、選ばれる企業への第一歩になる。

行政書士法人HAL

大阪代表行政書士

芳川 恒徳