HAL便り

雇用契約書の中身と現場の運用がズレると、離職率が上がる

2026.04.22

 

 

外国人雇用のミカタ

雇用契約書の中身と現場の運用がズレると、離職率が上がる

外国人を雇う現場では「そんな説明は受けていない」「聞いていた話と違う」という不満が、一度は必ずと言っていいほど出てくる。

多くの経営者は「現場のコミュニケーション不足」と片付けがちだが、たどっていくと出発点は雇用契約書と重要事項説明の時点でのズレにあることが多い。契約と実際の働き方が少しずつ違えば、その差分は必ず不信感と離職につながる。

ズレが生まれる典型パターン

書面と実態の不一致:契約書には「週40時間」と記載されているにもかかわらず、実際には早出・残業・休日出勤が常態化しているケース。日本人の職員にとっては「普通」でも、外国人にとっては契約内容そのものとして理解される。

説明と理解の不足:給与の内訳や控除について、母国語での説明や具体例が伴っていないことがある。給与明細を見た段階で「なぜこの金額なのか分からない」という不信が生まれる。

一時対応の恒常化:人手不足などの事情により、本来は休みである日に出勤を依頼したり、残業や休日出勤を一時的に増やしたりすることが繰り返され、常態化していくと実質的には労働条件の変更と同じ状態になる。

契約をめぐる3つの心得

①契約内容と実態を合わせる:ひな形を流用するのではなく、自社の勤務形態・シフトの組み方・手当の考え方に合わせて、契約書の文言を見直す。現場のリーダーと一緒に読み合わせ、「この一文は実際にどう運用しているか」を確認する。

②母国語で理解してもらう責任:日本語だけの契約書にサインさせるのは、後からトラブルになりやすい。理解の土台を作ることは、受入企業の義務だ。

③契約書のとおり実施すること:「契約書だけは整えておいて、あとは現場で調整」という発想を改める。運用が変わるのであれば、契約の見直しや重要事項の再説明が必要になる。

ズレを防ぐ3つの実務ポイント

①入職時の契約書の読み合わせ:日本語版と母国語版の両方を用意し、「あなたはどう理解しましたか?」と要約してもらうことで、認識のズレをその場で修正できる。

②現場の運用ルールを紙に落とす:「人手不足で休日出勤をお願いする場合のフロー」「残業を増やすときの同意の取り方」などを文書化し、責任者を明確にしておく。

③年に1回の契約・運用の棚卸し:賃金・処遇の見直しやシフト体制の変更があったタイミングで、契約書の内容と実態が合っているかをチェックする。

「契約どおり」は外国人スタッフの安心の土台になる

外国人スタッフにとって、日本で働くことは、生活の基盤そのものを預ける選択である。ビザの安定、家族への仕送り、母国で待つ家族の期待——そうした背景を踏まえれば、「契約どおりに働けるかどうか」は単なる労働条件の問題にとどまらない。

まずは、自社の契約書と現場運用を見直し、「どこがズレていそうか」を素直に点検するところから始めてほしい。完璧な契約書を一気に作る必要はない。「ここだけは直そう」というポイントを一つ決めて取り組むことが大切だ。

行政書士法人HAL

大阪代表行政書士

芳川 恒徳