HAL便り

「外国人でもどんな仕事を任せてもいい」は危険——職務記述書で線を引く理由

2026.04.17

 

 

外国人雇用のミカタ

「外国人でもどんな仕事を任せてもいい」は危険

「せっかく採用したんだから、いろいろやってもらわないと」

外国人スタッフを雇った会社で、現場からよく聞く言葉だ。気持ちはわかる。しかし、その発想のまま業務を広げていくと、入管法違反のリスクは一気に高まる。

特定技能・技術・人文知識・国際業務など、在留資格ごとに「できる仕事/できない仕事」が決まっているからだ。

「何でもやってもらう」では、会社を守れない

この記事では、次の3点を現場目線で整理する。

①なぜ「何でも任せる」が危険なのか ②入管法上、どこが問題になるのか ③職務記述書でどこまで防げるのか

「在留資格」と「実際の仕事」がズレると何が起きるか

入管法上、在留資格は「どのような活動が日本でできるのか」を示すものだ。にもかかわらず、現場ではこういうことが起きがちだ。

・本来はホール業務がメインのスタッフに、調理補助や配送まで任せている
・技人国で採用したエンジニアに、総務の雑用を恒常的に任せている
・特定技能の業務範囲を理解しないまま、別分野の作業をさせている

「ちょっと手伝ってもらうだけ」のつもりが、常態化すれば「資格外活動」や「在留資格に対応しない活動」と判断される可能性がある。結果として、在留期間の更新ができなかったり、会社側が「不法就労助長」と評価されたりすることすらある。決して軽い話ではない。

原因は「ジョブ型設計」の不足にある

一言でいえば、ジョブ型の設計がないからだ。何を任せるポジションなのか、そのポジションに含まれる業務はどこまでか、在留資格の活動内容と、きちんと対応しているか——これらが決まっていないまま採用すると、現場の都合で「できそうだからやってもらう」が積み重なり、いつのまにか在留資格の範囲を超えてしまう。

本質的な問題は「職務の設計がないこと」だ。

解決のカギは「職務記述書で線を引く」こと

①ポジション名 例:特定技能(外食)ホールスタッフ、特定技能(建設)型枠大工見習い など

②主な業務内容(メイン) 例:ホールでの接客・配膳・片付け、型枠大工の補助作業

③補助的な業務(サブ) 例:開店準備・閉店作業、現場の清掃・整理整頓

そして、「この職務からは外れる仕事」を明文化することも大切だ。調理そのものは別ポジション、事務所での経理・総務は別ポジション、別分野の作業は任せない——線を引いておくことで、現場が「どこまで任せていいか」を判断しやすくなる。

実務的な第一歩:今日からこの3つだけ決める

①在留資格ごとに、ポジション名を1つ決める
例:「特定技能1号(外食業)ホール担当」など、在留資格名と業務内容が一目でわかる名前にする。

②「主な業務」と「やらせない業務」を1枚に書き出す
主な業務は在留資格の活動内容と合致するもの。やらせない業務は資格外活動になりうるもの、他職種の中核業務だ。この2列を紙1枚に書くだけでいい。

③日本人スタッフにも同じ説明をする
「なぜこの仕事は任せないのか」を入管法・労務の両面から日本人スタッフにも共有することで、「外国人だから雑用でいい」という現場の空気を変えられる。

共存共栄は、「守る設計」から始まる

日本人と外国人が本当の意味で共存共栄するためには、「気持ち」だけでは足りない。入管法上、どこまで約束できるのか。会社として、どのような職務を用意し、どのような未来を提示できるのか。この「ルール」と「設計」を共有することが、土台になる。

職務記述書で線を引くことは、会社を守るためでもある。外国人スタッフの在留とキャリアを守るためでもある。そして、現場の不安とグレーゾーンを減らすための、いちばん現実的な一歩だ。

行政書士法人HAL

大阪代表行政書士

芳川 恒徳