HAL便り

「人が足りている今」が、最後のチャンスだ。——外国人雇用を経営戦略に変える思考法

2026.04.19

 

 

外国人雇用のミカタ

「人が足りている今」が、最後のチャンスだ。

「うちはまだ人が足りてるから」「外国人を雇うのは最後の手段でしょ」——経営者からこの言葉を聞くたびに、私の背筋が冷たくなる。なぜか。足りなくなってから動いても、もう遅いからだ。

外国人材の受け入れには、入管手続き、社内体制の整備、支援の仕組みづくりと、膨大な準備がいる。採用市場が干上がってから慌てても、制度も土台も一晩では整わない。

行政書士として17年、外国人雇用の現場に立ち続けてきた実感から断言する。「まだ大丈夫」は、経営者がおかす最も危険な判断ミスだ。

なぜ「まだ大丈夫」が命取りになるのか

「今はなんとか採れている」——その感覚が曲者だ。採用市場は年々狭まっている。外国人を迎え入れるには制度の理解、社内の受け入れ体制、支援の仕組みが不可欠だ。「人が足りなくなった」と気づいてから着手しても、すぐには整わない。

ましてやこの止まらない円安だ。日本の労働市場としての魅力は下がり続けている。優秀な人材ほど、韓国・台湾・オーストラリアなど他の選択肢に流れ始めている。時間が経てば経つほど、条件は悪くなる。

「まだ大丈夫」の正体は、「準備する時間が残っている」という意味だ。その時間は、確実に減っている。

数字は嘘をつかない——生産年齢人口の「確定した未来」

総務省の統計によれば、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年の約8,700万人をピークに減り続けている。2020年には約7,500万人。2040年には約6,000万人を割ると推計されている。

ここが重要だ。これは予測ではない。確定した未来だ。今から生まれる子どもが労働市場に入るまで15年以上かかる。つまり今後20年の労働力は、「もう生まれている人」だけで決まる。

特定技能をはじめとする制度は、この現実に対応するための選択肢だ。だが、選択肢は使いこなす準備がなければ機能しない。

「穴埋め」の発想が、人を遠ざける——外国人雇用の本質とは

外国人雇用を「人手不足の穴埋め」として捉える会社は多い。足りないから補充する。辞めたらまた入れる。この発想では、定着など望めない。

17年この仕事を続けてきて、痛感していることがある。定着する会社とそうでない会社の差は、給料の額面ではない。「この会社は自分を仲間として見ているか」——外国人スタッフはそこを見ている。

外国人雇用の本質は、「安い労働力の確保」ではない。一緒に働き、一緒に成長する仲間として迎え入れることだ。つまり、外国人雇用は「緊急対策」ではなく「経営戦略」として位置づけて初めて、持続可能な力になる。

今からできる「共存共栄」の土台づくり——3つの実務

①制度を「担当者だけの知識」にしない
経営層と現場の双方が制度の概要を共有する。これだけで、意思決定の質が変わる。

②現場の「なぜ?」に答える準備をする
「なぜ外国人を迎えるのか」「自分たちはどう関わればいいのか」——現場は必ずこの疑問を抱く。説明の機会をつくり、情報を見える化する。

③支援を「丸投げ」から「設計」に変える
登録支援機関に任せきりにしていないか。所属機関として「何を、いつまでに、誰がやるか」を明確にし、支援の流れを組み立て直す。

動いた企業だけが、10年後も生き残る

人口減少は待ったなしで進んでいる。「まだ大丈夫」と思っている企業ほど、動き出したときの遅れが致命傷になる。

外国人雇用を経営戦略として据え、今から共存共栄の土台を作る。制度を整理し、現場と対話し、支援体制を設計する。どれも明日から始められることだ。やるかやらないかで、10年後の景色はまったく違うものになる。

外国人材が「ここにいたい」と思える会社が増えれば、日本の現場が変わる。現場が変われば、地域が変わる。地域が変われば、この国の未来が変わる。一歩を踏み出すなら、今だ。

行政書士法人HAL

大阪代表行政書士

芳川 恒徳