HAL便り

法的安定性を度外視したルール変更は統治ではなく暴力である(後編)

2026.05.02

 

 

外国人雇用のミカタ

法的安定性を度外視したルール変更は統治ではなく暴力である(後編)

前編では、経営管理ビザ・帰化要件の引き上げと遡及適用の問題を論じた。後編では、特定技能外食業の受入一時停止がもたらす「制度の予測可能性」の破壊と、二つの制度変更が一人の人間を同時に追い詰める構造を明らかにする。

突然の制度停止という「裏切り」

特定技能外食業の受入一時停止で、在留資格認定証明書の交付申請を予定していたケースは、すでに評価試験や日本語能力試験の受験が進み、企業側でも住居を確保するなど具体的な準備に動いていた。停止によって手続の前提が崩れれば、投下したコストは回収の見込みを失う。

法的安定性には「制度の予測可能性」という柱がある。「このルールに従って動けば、合理的な期間内は制度が維持される」という信頼だ。突然の停止は、この予測可能性を正面から否定する行為だ。

二つの制度変更に同時に押し潰される人

ある町のインドカレー屋を想像してほしい。オーナーはネパール人で経営管理ビザで在留している。コツコツと地域に根を下ろし、常連客に愛される人気店を築き上げた。しかし、新基準では資本金3000万円が求められるようになった。

彼は経営権を手放し、特定技能に変更して従業員として同じ店で働き続けようとした。そこへ、特定技能外食業の受入一時停止。在留資格変更申請も不許可に。二つの制度変更が、一人の人間を二重に追い詰めた。

彼は何も悪いことをしていない。日本のルールに従って事業を営み、税金を納め、雇用を生み、地域に愛される店を作った。それでも、制度が彼を受け入れない。これが「法的安定性の毀損」の具体的な意味だ。

法的安定性なき国を、誰が信じるのか

ルールを変えるなら、適用は変更後の申請から。制度を止めるなら、すでに動き出したプロセスへの経過措置を設ける。これらは行政にとっての「コスト」ではない。法的安定性を守るための最低限の「作法」であり、外国人材に「日本で頑張ろう」と思ってもらうための前提条件だ。

人口減少が加速するこの国で、外国人材は「来てくれて当たり前」の存在ではない。韓国、台湾、シンガポール、オーストラリア。選択肢はいくらでもある。法的安定性なき国を、誰が信じるだろうか。

行政書士法人HAL

大阪代表行政書士

芳川 恒徳